警察庁のデータによると平成14年(2002年)の225,095件をピークに年々減少してきて、
平成23年には135,773件まで減少(減少率39.7%)してきています。
しかし、これは全体の犯罪件数が平成14年は2,486,055件だったのが、
平成23年には1,167,994件まで減少(減少率53.0%)によるものであって、
お年寄りが巻き込まれる犯罪件数の全体に対する比率は
9.1%から11.6%へ上昇しています。
比率上昇の理由の一つは、お年寄りの人口増加なので、
今後、ますます高齢化が進展していくことで、
この比率の上昇傾向は続くことが予想されます。
従って、犯罪者も女性、子供と並んで弱者でありながら、
タンス預金などのバブル期に貯めた預貯金が多いことから、
それを狙う犯罪者が益々高齢者を狙うことが懸念されます。
お年寄りが巻き込まれる犯罪は、犯罪の種類別に分けると平成23年度の場合で、
窃盗の被害が最も多く全体の約4分の3を占めます。
それ以外は、極端に下がって、詐欺が5.4%、暴行・傷害・強盗は3つ併せて3.1%にしか過ぎません。
件数では圧倒的に窃盗の被害に遭うことが多いのですが、
お年寄りが受ける被害で特徴的なのは、新聞、テレビで大きく報道されることから分かる通り、
振り込め詐欺、悪徳商法など詐欺の被害にあう比率が非常に高いことです。
警察庁のデータでは窃盗の被害額平均が不明ですが、
詐欺の場合はお年寄りがお金を持っていることもあって、
非常に高額な被害額の犯罪が増えています。
数百万円、時には数千万円も被害に遭い、
老後の資金の大部分を奪われてしまうような事件が多々起きています。
窃盗では、老後の生活が送れなくなるほど被害額が多くて、
お年寄りが大きなダメージを受けることは金額的には、少ないと推測されます。
詐欺に関しては、単純な騙しのテクニックであった「おれおれ詐欺」から、
最近は「劇場型詐欺」と高度化、複雑化、巧妙化してきています。
お金を支払う必要があると見知らぬ人から急に言われた場合は、
どんなに急がされても必ず誰かに相談する、
または同席してもらうことを肝に銘ずることが詐欺を防止する上で大きな効果を発揮するでしょう。
お年寄りは、絶対に一人で対応しない、一人で判断・決定をしないことを徹底すべきです。
ただし、お年寄りは、家族間でも、地域社会の中でも、現代においては孤立して、
相談相手がいないことも多いので、行政や地域社会など社会全体で、
すぐに駆けつけられる、または電話などの24時間365日すぐに相談にのれる体制を用意しなければ、
お年寄り対する犯罪を大きく減少させることはできません。
警察でも、行政でも良いので、そのような窓口を用意しておかねば
高齢者に対する犯罪を抑止することは難しいと思われます。
それと並行して、お年寄りとお年寄り予備軍に対して、
もっとお金を支払う前に誰かに相談しなければいけないということを啓蒙していくことが必要です。
自分は騙されないと思っている人でも、実際には騙されていると言います。
事例集を作って、具体的に相手が警官、弁護士、行政の人間を名乗っても
信用できないことを教え込むことが必要です。
併せて、自分の息子だと信じても、かけ直して確認を取るという基本的なことも理解して貰う必要があります。
この二つの何れかでも払い込む前に行うことができれば、詐欺は撲滅できると思われます。
振り込め詐欺以外にも、お年寄りに対して、年金をネタにしたり、
悪徳なリフォームを持ちかけたり、催眠商法をしかけたりと
詐欺の手口は多様化しています。
しかし、誰かと一緒でないと、判断しないということ、
ただそれだけをお年寄りが徹底すれば、手口は多様化していても、
被害を大きくなくすことができるようになることでしょう。
それを支える社会的仕組みの構築が急がれます。
お年寄りは、お年寄りには失礼かもしれませんが、
ある意味では詐欺をする人間にとっては、
子供以上の理解力があるので、かえって騙されやすい傾向にあります。
お年寄りに対する犯罪は、詐欺以外では、警察庁のデータから、
侵入盗、ひったくり、自転車の盗難、車上狙いが多いことが分かります。
お年寄りはこれらのデータを踏まえて、遭いやすい被害を良く認識し、
侵入盗や自転車の盗難、車上狙いに備え、
家や自動車、自転車の施錠を徹底し、併せて住宅においては
2重、3重化を検討することが大切です。
ひったくり犯罪への備えに対しては、
カバンなどは必ず車・バイク・自転車が通る側の手には持たないこと、
片側の肩にかけて持つのではなく、
カバンを持つ手と反対側の首に回して肩から下げるようにすることです。
これで、ほぼ防げます。