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朝日新聞2001.1.17「京都経営者列伝」 竹中センサーグループ会長 竹中新策が紹介される 下。
時を拓く 京都経営者列伝 竹中センサーグループ会長 竹中新策
グループが歩んだ道は、高度成長の階段を駆け上がった日本の軌跡と重なる。
生産態勢の効率化に成功
創業翌年の1960年、光をあてて大きさや色を感知し電気信号にして伝えるトランジスター式センサーを国内で初めて開発。小型化、省力化を実現した。生産態勢の効率化を目指していた製造業界から一躍注目を浴びた。
業界紙や専門誌にさかんに取り上げられ、製鉄から食品まであらゆる業界のメーカーから問い合わせが舞い込んだ。「これはいける」と確信した。
手ごたえをつかむと、次の手は素早かった。顧客の要望に合わせた装置を続けさまに開発し、受注を急増させた。5年後には当初手掛けた学術機器分野から撤退し、「稼ぎ頭」のセンサーに全力を注いだ。
「分社化」で互いに競争
73年の第一次石油危機直後の一時期を除き、センサーに特化した社業の業績は順調に伸びた。ところが15年前、米国で思いもよらない事態に直面した。
米国の電子機器メーカーとの間で進めた共同開発がとん挫。十分な成果が上がらなかったとして契約破棄を申し立てると逆に80億円の賠償を請求された。当時の売上の半分に相当した。
当時、不景気に見舞われていた米国では「日本たたき」が激しくなり、風当たりは強かった。/80年代初めに米国・シリコンバレーに進出し、販路を広げることに成功したが、当時のことは手荒い「洗礼」だったと思う。
訴訟から5年後に勝訴した。しかし、裁判費用などに3億円を費やした。
「係争中は米国の訴訟のことを片時も忘れたことはなかった。米国流の契約の怖さを思い知らされた」と振り返る。
グループの強みはそれぞれの企業が競い、技術力を高め合っていけることにあると思っている。分社化で規模を小さくし、組織を活性化できる利点もあった。
管理部門や営業拠点が重複している場合、グループの整理統合も必要となるだろう。しかし、これまでの手法を変えるつもりはない。
「今は欠点よりも長所の方が大きいと判断している。それに、創業者一族以外でも社長になれる、という期待を社員に持ってもらえると考えた」
起業ブームの流れは歓迎
最近は起業ブーム。起業家が「変わり者」扱いされた時代に事業を興しただけに、そうした社会の流れは歓迎だ。ただ、その一方で注文も忘れない。「自分の得意な分野で、地道にこつこつと努力を重ねることが大切。一攫千金を狙ってもうまくいかない。」
全国の高速道路で、自動料金徴収システム(ETC)の導入が進んでいる。その機器の約6割を受注。センサーで培った技術力は今後もグループを支えるとみている。
「ハイテク分野の進歩は早い。日本一、世界一でも新しいい技術が開発されれば、環境はがらりと変わる。現状に満足していてはいけない」
企業家の「先駆者」は、自分に言い聞かせるようだった。
(利き手・勝亦 邦夫)